種類株式の解説:第2回「残余財産の分配(優先分配)」

種類株式の内容について解説・検討するシリーズの第2回です。

第1回はこちら→種類株式(1)-剰余金の配当

残余財産の分配(優先分配)

残余財産の分配とは、会社が解散→清算する際、会社に残っている財産を株主に対して分け配ることです。

通常は、株主が所有する株式数に応じて、分配する財産の額が決まります。

株式を50%持っている人には残余財産の50%が分配され、株式を10%持っている人には残余財産の10%が分配されます。

剰余金の優先分配に関する種類株式とは、文字通り、普通株式に比べて残余財産の分配が優先される株式のことです。

残余財産の優先分配に関する一般的な定款記載例

当会社は、残余財産を分配するときは、A種優先株主又はA種優先登録株式質権者に対し、普通株主又は普通登録株式質権者に先立ち、A種優先株式1株につき金●円を分配する

A種優先株式は、普通株式より●円分の残余財産が優先して分配されるという基本的な内容です。

「●円」部分に関してはA種優先株式の発行価額で設定されることが多いように思います。

まず出資額分は優先して分配してね、という意味ですね。

A種優先株式に、前回解説しました優先配当に関する種類株式の「累積型」の内容も設定されている場合、累積した配当分に関しても優先分配がされる内容になっていることが多いと思われます。

出資額分と優先配当分を先に分配してね、という意味ですね。

参加型・非参加型

優先分配の内容としての優先配当と同様に、「参加型・非参加型」の別があります。

「参加型」とは、優先株主が定款所定の優先分配額の支払いを受けた後、さらに残った残余財産からの分配を追加して受けられる形です。

「非参加型」とは、優先分配額の支払いを受けるのみで、それ以上は追加して受け取れない形となります。

「参加型」の定款記載例

A種優先株主又はA種優先登録株式質権者に対してA種優先残余財産分配額の全額が支払われた後に、普通株主又は普通登録株式質権者に対して残余財産の分配をする場合には、A種優先株主又はA種優先登録株式質権者には、A種優先株式1株当たり、普通株式1株当たりの残余財産分配額と同額の残余財産の分配をする

「非参加型」の定款記載例

A種優先株主又はA種優先登録株式質権者に対しては、前記のほか(注:A種優先残余財産分配額)、残余財産の分配を行わない

「参加型」では、優先分配額に加えて、さらに普通株式と同額の残余財産が分配される内容になっているのに対して、「非参加型」では優先分配額以上の分配を受けることができません。

結び

第2回は、種類株式の内容として「残余財産の分配(優先分配)」について見てきました。

次回は「取得請求権(金銭への転換請求権)」について考えてみようと思います。

種類株式についてはこちらもどうぞ:サービス|種類株式(司法書士・診断士 長克成事務所)

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