有限会社の特徴(株式会社との相違点)簡易版
1.前提
平成18年5月1日施行の「会社法」及び「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(整備法)」により「有限会社法」が廃止され、有限会社は株式会社の特例の形態として存続することになりました。
⇒有限会社は現在、株式会社である。一部有限会社の特則がある。(下記2.参照)
会社法の規定が適用されることになり
・有限会社の社員⇒株主
・出資口数⇒株式数
・社員総会⇒株主総会
となりました。
2.有限会社の特則(一部抜粋)
商号に関する特則
商号には「有限会社」という文字を用いる。「株式会社●●」に商号変更することにより、一般の株式会社に移行することが可能。
株式の譲渡制限の定めに関する特則
発行する株式を譲渡する場合には会社の承認を要するが、株主間の譲渡では承認が不要。譲渡制限の定めを廃止することはできない。
株主総会の特別決議の要件に関する特則
総株主の半数以上であって、当該株主の議決権(株式数)の4分の3以上に当たる多数の賛成が必要。(人数ベースで全株主の半数以上、かつ、議決権ベースで全体の4分の3以上と非常に要件が重い。)
(⇔株式会社は、過半数以上の議決権を持つ株主が出席した上で、出席株主の議決権の3分の2以上に当たる多数の賛成。頭数要件がなく、議決権ベースでも有限会社より軽い。)
※特別決議:会社の重要事項を決定する株主総会の決議
例:定款変更、株式の発行、など
機関に関する特則
取締役会を設置することができない。
役員の任期に関する特則
任期に上限がない。(⇔株式会社では10年がMAX)⇒役員再任の登記が不要
決算公告に関する特則
毎事業年度の決算公告が不要(⇔株式会社は毎年必須)
3.有限会社のメリット・デメリット
有限会社のまま存続することのメリット
・役員に任期がないので、役員の再任の手続・登記が不要。
→数年に一度の登記費用(数万円)が不要、手続の手間がかからない。
・毎年の定時株主総会後の決算公告が不要
→毎年7万5000円程度(官報の場合)が不要、手間がかからない。
有限会社のメリットとしては、会社法上の手続の手間、費用がかからないという点があります。
有限会社のまま存続することのデメリット
・特別決議の要件が重いので、株式が分散した場合、株主間に意見の対立が生じた場合、重要な決議が成立しなくなる可能性がある。
・取締役会が設置できないため、事業規模が大きくなる場合に適した機関設計が採用できない。
有限会社のまま存続した場合に特に気を付けるべき点は、株主総会の特別決議要件です。株主に相続等が発生し株式が分散した場合や、株主間に意見の対立が生じた場合など、頭数要件や議決権要件が満たせず、決議が成立しなくなる恐れがあります。
株式の分散を防ぐことに注意が必要であるとともに、親族等の安定株主のみが株式を所有することが望ましいです。