定款認証時の実質的支配者特定資料

実質的支配者となるべき者の申告制度

やや古い話ですが、平成30年(2018年)11月30日から株式会社等の設立時の定款認証の際に、「実質的支配者となるべき者の申告制度」がスタートしました。

概要は↓のリンクのとおりです。

リンク:実質的支配者となるべき者の申告制度(公証人連合会)

スタートして4年以上経っていて、だいぶ数も扱っているので特別な手続でもなくなっているのですが、先日1つ気になることが。

設立する会社等の実質的支配者を申告し、実質的支配者に該当する者については、本人特定資料を提出する必要があります。

その提出する「実質的支配者となるべき者の本人特定事項等が明らかになる資料」とは何ぞや、ということです。

実質的支配者となるべき者の本人特定事項等が明らかになる資料も添付する(自然人の場合には、運転免許証、旅券、個人番号カード(マイナンバーカード)、在留カード等の写し等、法人の場合には、全部事項証明書及び印鑑証明書の原本又は写し)。

【実質的支配者となるべき者の申告書(株式会社用)】の欄外注意事項

上記に本人特定資料の例が載っています。

自然人の場合には、「運転免許証」「旅券」「個人番号カード(マイナンバーカード)」「在留カード」等の写し、です。

本制度導入の際の説明では、「個人印鑑証明書」も該当するという扱いということでした。

設立する株式会社の実質的支配者は、発起人であることが多いです。その場合は、定款認証時に個人印鑑証明書を提出することになるため特に本人特定資料を追加提出する必要がなく済ませることが可能です。

で、少し前ですが、実質的支配者が発起人以外の自然人であり、上記の資料が準備できない(持っていない・印鑑登録もしていない)けど他に使えるものはないか、検討する機会がありました。

そこで、「実質的支配者となるべき者の本人特定事項等が明らかになる資料」について条文等の根拠はあるのか調べてみました。

本人特定事項に関する根拠を探す

まず制度は、「公証人法施行規則第13条の4」に定められています。

第十三条の四 公証人は、会社法(平成十七年法律第八十六号)第三十条第一項並びに一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)第十三条及び第百五十五条の規定による定款の認証を行う場合には、嘱託人に、次の各号に掲げる事項を申告させるものとする

 法人の成立の時にその実質的支配者(犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成十九年法律第二十二号)第四条第一項第四号に規定する者をいう。)となるべき者の氏名、住居及び生年月日

 前号に規定する実質的支配者となるべき者が暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第二条第六号に規定する暴力団員(次項において「暴力団員」という。)又は国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法(平成二十六年法律第百二十四号)第三条第一項の規定により公告されている者(現に同項に規定する名簿に記載されている者に限る。)若しくは同法第四条第一項の規定による指定を受けている者(次項において「国際テロリスト」という。)に該当するか否か

 公証人は、前項の定款の認証を行う場合において、同項第一号に規定する実質的支配者となるべき者が、暴力団員又は国際テロリストに該当し、又は該当するおそれがあると認めるときは、嘱託人又は当該実質的支配者となるべき者に必要な説明をさせなければならない。

公証人法施行規則第13条の4

ここには本人特定書類については出ていませんね。

では、公証人の本人確認については、どこに定めがあるのか調べてみました。

公証人の公正証書作成時における本人確認に関する根拠条文は「公証人法第28条1項・2項」のようです。

第二十八条 公証人証書ヲ作成スルニハ嘱託人ノ氏名ヲ知リ且之ト面識アルコトヲ要ス

 公証人嘱託人ノ氏名ヲ知ラス又ハ之ト面識ナキトキハ官公署ノ作成シタル印鑑証明書ノ提出其ノ他之ニ準スヘキ確実ナル方法ニ依リ其ノ人違ナキコトヲ証明セシムルコトヲ要ス

公証人法第28条1項・2項

嘱託人と面識があればOKというのが1項。面識がないときは印鑑証明書やこれに準ずる確実な方法で本人であることを証明しなければならないというのが2項です。

「これに準ずる確実な方法」というのが運転免許証やパスポート・マイナンバーカード等の「官公庁から発行された顔写真付証明書」ということになるようです。(参考:新宿公証役場のサイト

実質的支配者については、定款認証に関する嘱託人本人ではありませんが、おそらくこの公証人の本人確認の方法に準じた書類の提出が求められているのではないか、という結論に至りました。

定款認証を依頼する公証役場にも問い合わせてみましたが「官公庁から発行された顔写真付証明書」又は印鑑証明書、加えて(これにも本人確認が必要となりますが)最寄りの公証役場で取得いただいた認証のある署名証明書をにて行うと回答され、別の書類(住民票・健康保険証、その他書類の組み合わせ含む)では認められないということでした。

ということで、定款認証時の実質的支配者の特定資料について検討してみました。

誰か同じような疑問を持った方の参考になれば幸いです。

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