種類株式の解説:第1回「剰余金の配当(優先配当)」

ベンチャーキャピタル(VC)や事業会社など、プロの投資家から出資を受ける場合には、普通株式ではなく種類株式での募集株式の発行を求められることも多いです。

というわけで、何回かに分けて種類株式の内容について解説・検討するシリーズをお送りして行こうと思います。

第1回は「剰余金の配当(優先配当)」について。

剰余金の配当(優先配当)

剰余金の優先配当に関する種類株式とは、文字通り、普通株式に比べて剰余金の配当が優先される株式のことです。

剰余金の優先配当に関する一般的な定款記載例

当会社は、剰余金の配当をするときには、当該配当の基準日の最終の株主名簿に記載又は記録されたA種優先株式を有する株主又はA種優先株式の登録株式質権者に対し、同日の最終の株主名簿に記載された普通株式を有する株主又は普通株式の登録株式質権者に先立ち、A種優先株式1株につき金●円を支払う。

A種優先株式は、普通株式よりも●円優先して配当が行われるという基本的な内容です。

「●円」部分に関しては発行価額の■%という形で設定されることが多いように思います。

累積型・非累積型/参加型・非参加型

優先配当の内容として、一般に、①累積型・非累積型の別、②参加型・非参加型の別があります。

累積型/非累積

「累積型」とは、ある事業年度に定款所定の優先配当金全額の支払いが行われなかった場合に、不足分について翌期以降に補填支払いがなされる形です。

「非累積型」とは、未払優先配当金は切り捨てられる形となります。

「累積型」の定款記載例

ある事業年度においてA種優先株主又はA種優先登録株式質権者に対してした剰余金の配当の額がA種優先配当金に達しないときはその不足額は、翌事業年度以降に累積し、累積した不足額(以下「A種累積未払配当金」という。)については、A種優先配当金に先立って、これをA種優先株主又はA種優先登録株式質権者に支払う

「非累積型」の定款記載例

ある事業年度においてA種優先株主又はA種優先登録株式質権者に対してした剰余金の配当の額がA種優先配当金に達しないときはその不足額は、翌事業年度以降に累積しない

「累積型」の場合は、優先配当が定款所定の金額まで行われない場合、翌事業年度以降に累積して積み上がっていきます。

「非累積型」の場合は、各事業年度ごとの配当に関して優先配当が行われるだけで、特定事業年度に配当が行われなかったとしても特にそれ以降の事業年度に影響はしません。

「累積型」を採用する場合は、株式による出資という形を取りながら、一定の利息が付されているいるようなイメージとなりますね。

金銭による取得請求権行使時に、累積している未払いの優先配当金も含めて回収されることが多いのではないでしょうか。

参加型・非参加型

「参加型」とは、優先株主が定款所定の優先配当金の支払いを受けた後、さらに残余の分配可能額から配当も追加して受けられる形です。

「非参加型」とは、優先配当金の支払いを受けるのみで、追加して受け取れない形となります。

「参加型」の定款記載例

当会社は、A種優先株主又はA種優先登録株式質権者に対して、第1項に定めるA種優先配当金のほか、普通株主又は普通登録株式質権者に対して行う剰余金の配当と同額の剰余金の配当を行う

「非参加型」の定款記載例

A種優先株主又はA種優先登録株式質権者に対しては、A種優先配当金を超えての剰余金の配当は行わない

「参加型」では、優先配当金に加えて、さらに普通株式と同額の配当を受け取れるのに対して、「非参加型」では優先配当金以上の配当を受け取ることができません。

結び

第1回は、種類株式の内容として「剰余金の配当(優先配当)」について見てまいりました。

累積型・非累積型/参加型・非参加型によって、出資者から会社に要求される配当の内容が大きくことなることになるかと思います。

次回は「残余財産の分配(優先分配)」について考えてみようと思います。

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