種類株式の解説:第7回「拒否権」

種類株式の内容について解説・検討するシリーズの第7回です。

拒否権

拒否権が付された種類株式(拒否権付種類株式)とは、株主総会、取締役会等において決議すべき事項のうち、当該決議に加えて、拒否権付種類株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を必要とすることを定款で定めた株式のことです。

拒否権を定めた事項を決議して実行するには、拒否権付種類株式の株主がOK出さないとダメ、ということですね。

拒否権付種類株式を設ける場合は、種類株式の内容として、定款で次の事項を定める必要があります。

  • 株主総会・取締役会等において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とする旨
  • 種類株主総会の決議があることを必要とする事項
  • 種類株主総会の決議を必要とする条件を定めるときはその条件

拒否権付種類株式に関する一般的な定款記載例

以下の事項については、株主総会又は取締役会の決議のほか、優先株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とする

1.定款の変更
2.当会社の株式、新株予約権又は新株予約権付社債の発行
3.●●●●
4.〇〇〇〇

1~4.の項目が拒否権の項目です。1つでも複数でも可です。

司法書士的な観点から拒否権付種類株式の注意

拒否権の内容は登記され、外部に公開されます。

そのため、拒否権として定められた内容について、決議・実行する場合は、必ず種類株主総会の手続が必要となり、種類株主総会議事録等を作成・保管する必要があります。

登記申請の際には、種類株主総会議事録が必須の添付書類となり、安易に拒否権の範囲を定めると、会社の各種手続が煩雑になることも考えられます。

よって、拒否権を設定する内容については、本当に種類株式の内容として設定する必要があるのか、言い換えれば、投資契約や株主間契約等で事前承諾事項として定めることで足りないか、検討した方がよいかと思います。

経験上、スタートアップ/ベンチャー企業で、種類株式の内容として拒否権を付すことはさほど多くなく、投資契約等で事前承諾事項として債権的に定められていることが多いように思います。

結び

第7回は、種類株式の内容として「拒否権」について見てきました。

今回は、比較的イメージしやすいお話だったかと思います。

企業法務/商業・法人登記
港区の司法書士
長克成