新株予約権の解説:第2回「新株予約権の内容1:目的である株式等」

会社法第236条で規定されている「新株予約権の内容」。

今回はそのうち「新株予約権の目的である株式の種類及び数」と「新株予約権の行使に際して出資される財産の価額又はその算定方法」について見ていこうかと思います。

新株予約権の内容

新株予約権の目的である株式の種類及び数

新株予約権の内容としてまずは、「その新株予約権を行使した場合に、会社から交付される株式の種類と数」を定めることとなります。

ストックオプションの場合は、通常普通株式であることがほとんどで、新株予約権1個に対して当初は普通株式1株と定めることが多いと思われます。

転換社債型新株予約権付社債の場合は、「行使する新株予約権にかかる社債の総額/行使価額(転換社債発行時の株価)」と定める形が多いです。

J-KISSの場合は、次回株式資金調達において発行される株式を基準として色々と規定がおかれています。(次回株式資金調達が種類株式で行われる場合にはその種類株式に準じた種類株式を発行する旨や次回資金調達の株価からディスカウントした金額で株式に転換できる旨など)

「基本的な新株予約権」と「転換社債型新株予約権付社債」の一般的な定め方は以下のとおりです。

基本的な新株予約権の場合

新株予約権の目的である株式の種類及び数

普通株式●株
なお、新株予約権1個の目的となる株式の数(以下「付与株式数」という。)は、当社普通株式1株とする
(中略)
調整後付与株式数=調整前付与株式数×分割・併合の比率【株式分割・併合の場合の調整】

転換社債型新株予約権付社債の場合

新株予約権の目的である株式の種類及び数又はその算定方法

(1)本新株予約権の目的である株式の種類は普通株式とする
(2)本新株予約権の目的である株式の数は以下の算式により算出するものとする。
  株式数=行使する本新株予約権にかかる本社債の払込金額の総額/行使価額
(3)行使価額は、当初金●円とする。但し、以下に定めるところに従い調整されるものとする。
【以下調整に関する条項】

新株予約権の行使に際して出資される財産の価額又はその算定方法

次は、「新株予約権を行使する際にいくら支払うか」です。

基本的な新株予約権の場合は、行使時に金銭を支払います。価額は発行時の時価(≒直近の株式発行価額)で設定されることが多いと思われます。

税制適格ストックオプションの場合、「権利行使価額が権利付与時の株式時価以上であること」ということが要件の一つとなっていますので、発行時によく検討が必要です。

転換社債型新株予約権付社債の場合は、行使する新株予約権にかかる社債を現物出資することとなります。

「基本的な新株予約権」と「転換社債型新株予約権付社債」の一般的な定め方は以下のとおりです。

基本的な新株予約権の場合

新株予約権の行使に際して出資される財産の価額

各新株予約権の行使に際して出資される財産の価額は、各新株予約権を行使することにより交付を受けることができる株式1株当たりの払込金額(以下「行使価額」という。)に付与株式数を乗じた金額とする。
行使価額は、金●万円とする。
(中略)
【株式分割・併合の場合の調整式】
                     1
調整後行使価額=調整前行使価額×ーーーーーーーーーーー
                 分割・併合の比率 
(中略)
【調整前行使価額を下回る価額で募集株式の発行をした場合の調整式】
              新規発行株式数×1株当たり払込金額
          既発行+ーーーーーーーーーーーーーーーーー
調整後  調整前  株式数      調整前行使価額
行使価額=行使価額×ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
              既発行株式数+新規発行株式数

(注)
「調整前行使価額を下回る価額」ではなく「時価を下回る価額」とする場合もありますが、非公開会社の株式の時価は算定がしにくいことから、上記の定め方の方がベターかと思います。

出資される財産の価額は、新株予約権1個当たりいくらと定めてもよいです。

「行使価額」×付与株式数となっているのは、新株予約権の前身である新株引受権が株数で数えた関係からこのような定めを取る例が多いそうな。(『事例で学ぶ会社法実務』全訂版 中央経済社 より)

実務で扱う新株予約権は、肌感覚では「行使価額」×付与株式数の形がかなり多い気はしますね。

転換社債型新株予約権付社債の場合

本新株予約権の行使に際して出資される財産の内容及び価額

本新株予約権の行使に際し、当該本新株予約権にかかる本社債(但し、その払込みがなされたものに限る。)を出資するものとし、当該本社債の価額は、その払込金額と同額(新株予約権1個当たり金●万円)とする

こちらは、社債をその払込金額で現物出資して、「新株予約権の目的である株式の種類及び数」で定めている計算式に乗せる形となります。

結び

今回は新株予約権の内容のうち、「新株予約権を行使した場合に会社から交付される株式の種類と数」「新株予約権を行使する際にいくら支払うか」に関する一般的な定め方などを見てきました。

第3回に続きます。

会社登記/企業法務
東京都港区の司法書士
長克成