株式会社の設立手続きについて、改めて考えるシリーズ第6回:役員・事業年度です。

今回は、設立時定款で定める「役員」「事業年度」について、見ていきます。

役員と役員任期

会社設立時に多い取締役会非設置会社について見ていくことにします。

取締役会非設置会社の機関構成は「株主総会」+「取締役」のみであることが多いです。

「取締役」は株主から会社の経営を委任された者です。報酬と引き換えに、株主の利益を最大にすべく会社の業務執行を行います。

以下のような点が、検討事項・ポイントとなります。

役員に関する検討事項・ポイント

役員に関して
  • 必要な機関は「株主総会」+「取締役(1名以上)」(+必要に応じて「監査役」)
  • 設立時は株主=取締役が多い
  • 株主≠取締役の場合は特に注意
  • 非業務執行取締役や社外役員がいる場合は責任限定契約の規定を

「1」「2」のとおり、会社設立時は株主=取締役のみという最小限の機関構成であることが多いです。

共同創業者が複数人いて、各自が取締役となるような場合は、創業株主間契約等で「取締役を辞める場合には所有する株式を、残る株主兼取締役に譲渡する」旨の定めをしておくと株式が分散せずよいかと思います。

「3」のように株主≠取締役がいる場合には、役員任期を短めに設定しておき、会社に合わない取締役には任期満了をもって退任いただく等、会社にとって好ましくない事態を予防するような措置を取っておいた方がよいでしょう。

「4」非業務執行取締役や社外役員とは、会社法第427条で定める責任限定契約の締結を求められることが多いので、当該契約が締結できる旨を定款で定めておく必要があります。

役員の任期に関して
  • 法定任期は取締役2年(監査役は4年)
  • 非公開会社は、定款で定めることにより取締役の任期を1年~10年まで自由に設定可能

法定の役員任期は取締役=2年、監査役=4年ですが、株式に譲渡制限が付されている非公開会社では、定款で定めることにより取締役の任期を1~10年(監査役は4年~10年)とすることができます。

1名の株主=取締役であるような場合は最長の10年にしてもよいかと思います。

しかし、複数人の役員がいる場合、特に株主以外の役員がいる場合には、あまり長い任期を設定せず、各任期ごとに役員のパフォーマンスを判断して、再任するか否かを決定していった方がよいと思います。

事業年度

「事業年度」とは、会社法で定める計算書類(貸借対照表、損益計算書その他法務省令で定めるもの)を作成する対象となる一定の期間のことをいいます。

会社の場合は、定款で事業年度(通常は1年単位)を定めます。

例:当会社の事業年度は、毎年●月1日から翌年■月31日までとする。

事業年度末日を決算期として、決算・各種計算書類の作成を行い、定時株主総会で計算書類を承認のうえ、決算税務申告を行うこととなります。

事業年度に関する検討事項・ポイント

  • 最初の決算期は設立日から1年以内の任意の月で設定できる
  • 各事業年度は決算期から1年間
  • 税務申告は決算後2か月以内に行う(申告期限の延長申請をすると3か月以内まで)
  • 税理士の先生の繁忙期の問題
  • 消費税非課税期間の問題
  • 1期目を長くするためには

「1」会社の設立日から1年以内の月末を最初の決算期として定めます。

その決算期から毎年1年間が各事業年度となり、毎年決算期から一定期間内に定時株主総会による決算承認→決算税務申告を行うこととなります。「2」「3」

事業年度の定め方としては、会社の事情によって異なりますが、↓のような観点もあります。

  • 「4」税務申告を行う税理士の先生との相談で決定する。
  • 「5」設立時資本金が1,000万円未満である場合は消費税の免税期間があるため、その期間をできるだけ長くとれるように定める。
  • 「6」設立後の1期目をできるだけ長く取れるように定める。(例:7月設立の場合→決算期を6月末/2月設立の場合→決算期を1月末)

結び

今回は、会社設立時の役員・事業年度関連について見てきました。

「改めて考える株式会社設立シリーズ」は一旦ここまでです。

皆様の株式会社設立の参考になれば幸いです。

企業法務/商業・法人登記
港区の司法書士
長克成