株式会社の設立手続きについて、改めて考えるシリーズ第5回:株主・株式等です。
第1回はこちら→改めて考える株式会社設立(1)‐スケジュール
第2回はこちら→改めて考える株式会社設立(2)‐商号
第3回はこちら→改めて考える株式会社設立(3)‐本店
第4回はこちら→改めて考える株式会社設立(4)‐事業目的
今回は、設立時定款で定める「株主・株式に関すること」について、考えていこうと思います。
株主・株式に関すること
設立時定款で定める株主・株式に関連する事項は「発起人」「出資額」「株式数」「資本金」「発行可能株式数」「株券」などです。
以下のような点が、要件・検討事項・ポイントとなります。
株主・株式に関する要件・検討事項・ポイント
発起人・出資額・株式数について
- 発起人=会社設立後の株主=出資が必須
- 出資額:当面(収益があがるまで)にかかる必要な費用が目安
- 設立時の出資額の割合=設立後の株式所有割合=会社の所有割合=会社の議決権割合
- 発起人1人の場合はあまり深く考えなくてOK!
- 発起人2人以上の場合は出資割合を慎重に考える
- デッドロック(進むのも戻るのもできない)を避ける
会社の経営等々を考えた場合「会社はだれのものか?」という永遠の課題はありますが、会社法の思想では「会社は株主のもの」です。
特に、スタートアップ・中小企業で採用されることが多い「取締役会非設置会社」の場合は「株主総会がすねてのことを決定できる万能の機関」となりますので、ご注意ください。
よって、「5」のとおり、発起人(創業株主)が複数名いる場合は、その出資割合=株式所有割合に関してよく検討する必要があります。
株式の所有割合として、株主総会の決議要件である「過半数」「 3分の2以上(3分の1握られる)」といった数字がポイントとなります。
「6」のデッドロックとは、(株主等の意見の)対立により会社としての意思決定が難しくなる状態を指します。
典型的な例が、株主が2名で互いに50%ずつ株式を所有しており意見が対立するような事例です。
株主総会の決議が成立せず、会社の意思決定ができない状況になり、会社の運営が困難となりますので、そういった事態にならないよう株式所有割合を決定しましょう。
また、これから事業をスタートするときにあまり想定はしたくないものですが、創業メンバーの株式が分散してしまい、株式の回収が困難になる事例は多いです。
関係がよいときに、関係が悪くなった場合も予め想定して、創業株主間契約等で経営に関わらなくなった場合の株式の帰属・株式の買取方法などを定めておいた方がよいと思います。
資本金について
- 資本金:出資額の2分の1~全額の範囲で資本金を決定する
- 融資の条件、取引条件、許認可の要件等を確認
- 消費税の免税(資本金1000万円未満)
- 外形標準課税(資本金1億円超)
- その他税金との兼ね合い
設立時の出資金のうち2分の1以上の任意の額をを資本金とすることとなります。
資本金は、会社のB/S(貸借対照表)の縦幅の基本となるものであり、取り崩しにくい数字です。
資本金が大きいほど、一般的には信用力・安定性が高いとされています。
上記のような性質があるため、「2」のとおり、金融機関からの融資、取引先との取引条件、許認可の要件等に資本金要件が設定されることがあります。
会社法が施行後は、設立時の資本金の額の要件(1000万円以上)がなくなりましたが、ある程度の金額の資本金は必要となろうかと思います。
また、資本金の額は「3」「4」「5」のように、税金とも深く関係があります。税理士の先生等へご相談することもおすすめします。
発行可能株式総数について
- 発行可能株式総数も多めにとっておいてOK
会社が何株まで発行することができるか、定款で定める必要があります。株式の譲渡制限が付されている非上場会社は特に制限がありませんので、多めの枠を確保しておくとよいでしょう。
株券について
- 株券は発行しないのが普通
現在の株式会社は、株券不発行が基本となります。特段の理由がない場合は、株券は発行しない旨を定款に定めておきましょう。
結び
今回は、会社設立時の株主・株式関連について見てきました。
株式所有割合に関しては、最重要事項となりますので、慎重にご検討ください。
企業法務/商業・法人登記
港区の司法書士
長克成