株式会社の設立手続きについて、改めて考えるシリーズ第4回:会社の事業目的です。
第1回はこちら→改めて考える株式会社設立(1)‐スケジュール
第2回はこちら→改めて考える株式会社設立(2)‐商号
第3回はこちら→改めて考える株式会社設立(3)‐本店
今回は、定款の必要的記載事項である「事業目的」について、考えていこうと思います。
事業目的
会社は定款で定められた事業目的の範囲内で権利を有し、義務を負います。(民法第34条)
「目的=会社の活動範囲」と言えます。
(法人の能力)
民法第34条
第34条 法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。
以下のような点が会社の事業目的に関する、要件・検討事項・ポイントとなります。
事業目的に関する要件・検討事項・ポイント
- 適法性/具体性/明確性/営利性
- 会社の目的はだれが見る?
- 具体的に記載する部分と概括的に抑える部分
- 許認可を取得する必要がある場合
- 避けた方がよいこと
各種検討
会社の事業目的の要件
会社の事業目的は「1」を満たす必要があります。
適法性については、「違法でない(他の法律で制限されていないこと含む)」「公序良俗に反しない」などですね。例えば、司法書士法でその業務と定められている「登記手続の代理」などは会社の目的とすることができません。
具体性、明確性については、日本語として意味が通じて、事業の内容がわかるようになっていればよい感じですね。
営利性については、株式会社は営利法人であるので、事業目的全体が営利性を持たないようなものになっているとダメです。
会社の目的はだれが見る?
定款の事業目的は、特に株主・取引先・金融機関が見ることを意識するとよいかと思います。
「株主」:会社の取締役は株主から事業目的の範囲内で経営を委任されています。もし事業目的に規定されていない事業を行って損失を出してしまったような場合には、株主から強く責任の追及がされることになるかと思います。
「取引先」:取引を開始する際に会社の定款・登記簿謄本を提出することも多いと思われます。取引内容に関する事業目的が記載されている必要があるでしょう。
「金融機関」:口座を開設する際、融資を申し込む際などに事業目的はしっかり確認されます。
具体的に記載する部分と概括的に抑える部分
事業目的の定款への記載は「●●、〇〇、□□、◆◆の企画、開発、販売及び運営」といったように具体的に商品・サービスを記す記載と、「△△業」のように概括的に記す記載があります。
記載方法に正解はありませんが、
「会社のメイン事業」=その内容が想像できるような形でできるだけ具体的に記載
「メインではないが行う可能性のある事業」=広めに事業内容を捉えられるよう概括的に記載
というような使い分けがよいのではないかと考えます。
行うべき事業がしっかりと網羅されつつ、会社の事業目的を見た方が「この会社はどんな事業を行う会社なのか」をきちんと想像できるように記載していくことが大切です。
許認可を取得する必要がある場合
許認可を取得する必要がある事業を行う場合は、事業目的の記載に特に注意が必要です。
許認可を行う行政機関が必要と考える事業目的の記載が必要となりますので、事前に許認可を申請する行政書士の先生等又は行政機関に確認した上で、事業目的を設定し会社を設立することが望ましいです。
避けた方がよいこと
「目的=会社の活動範囲」だからといって、幅広く活動できるようにと、事業目的は20個、30個…と記載してしまって、事業目的全体を見て、どのような事業を行う会社であるのかがわからなくなってしまうことがあります。
どのような事業を行う会社なのかが不明で、銀行口座の開設ができなかったという話も聞いたことがあります。
繰り返しになりますが、会社の事業目的を見た方が、この会社はどんな事業を行う会社なのかわかることが大切です。
結び
今回は、会社設立時の事業目的について見てきました。
今後は株式に関すること、役員に関すること等をテーマにしていこうと思います。
企業法務/商業・法人登記
港区の司法書士
長克成