新株予約権の解説:第3回「新株予約権の内容2:行使期間等」
- 第1回はこちら→新株予約権(1)-発行手続
- 第2回はこちら→新株予約権(2)-内容1:目的である株式の種類及び数/出資財産
会社法第236条で規定されている「新株予約権の内容」。
今回はそのうち「新株予約権を行使することができる期間」「増加する資本金及び資本準備金」「譲渡制限」について見ていこうかと思います。
新株予約権の内容
新株予約権を行使することができる期間
新株予約権の行使について、行える期間を定めます。
通常は、●年●月●日から■年■月■日まで行使することができるという内容で定めます。
この期間の定めに関しては、「税制適格ストックオプション」の場合は特に注意が必要です。
税制適格ストックオプションでは、「権利行使が付与決議日から2年を経過した日から10年を経過する日までに行われなければならないこと」という要件を満たす必要があります。
租税特別措置法では、付与契約で定める事項となっていますが、税理士の先生に確認すると新株予約権の発行要項(新株予約権の内容)の方も上記期間に合わせてください、と言われることが多いです。
というわけで、新株予約権の内容を定める際に、税制適格要件を満たすか否か、顧問税理士の先生等とよくご確認いただければと思います。
- 税制適格ストックオプションについてはこちら→ストックオプション(当サイト内リンク)
新株予約権を行使することができる期間に関する記載例
新株予約権を行使することができる期間
令和●年(20〇〇年)●月●日から令和■年(20□□年)■月■日まで
なお、行使期間の開始日が当社の休業日にあたるときはその翌営業日を開始日とし、また行使期間の最終日が当社の休業日にあたるときはその前営業日を最終日とする。
期間を定めることが一般的ですが、始期のみを定めたり、無期限とすることもできます。
増加する資本金及び資本準備金
会社法の条文上は「当該新株予約権の行使により株式を発行する場合における増加する資本金及び資本準備金に関する事項」ですが、ここでは短く「増加する資本金及び資本準備金」と記載します。
新株予約権を行使し会社が新株を発行する場合、会社計算規則第17条第1項に従い算出される資本金等増加限度額が原則資本金として計上されますが、その2分の1を超えない範囲で資本準備金に計上することができます。(会社法第445条)
これらの増加する資本金及び資本準備金については新株予約権の内容として発行時に定めておく必要があります。
増加する資本金及び資本準備金に関する記載例
新株予約権の行使により株式を発行する場合における増加する資本金及び資本準備金の額
1.新株予約権の行使により新株を発行する場合において増加する資本金の額は、会社計算規則第17条第1項に従い算出される資本金等増加限度額の2分の1の金額とし、計算の結果1円未満の端数を生じる場合は、この端数を切り上げるものとする。
2.新株予約権の行使により新株を発行する場合において増加する資本準備金の額は、上記1.記載の資本金等増加限度額から上記1.に定める増加する資本金の額を減じた額とする。
上記は、資本金等増加限度額の2分の1を資本準備金として計上する場合の例ですね。
譲渡制限
会社法の条文上は「譲渡による当該新株予約権の取得について当該株式会社の承認を要することとするときは、その旨」です。
新株予約権に関しても株式と同様、譲渡制限を設定することができます。(株式と異なり登記はされません。)
新株予約権自体に譲渡制限を付す場合は、新株予約権の内容として当該定めを行う必要があります。
譲渡制限に関する記載例
譲渡による新株予約権の取得の制限
譲渡による新株予約権の取得については、当社の承認を要する。
税制適格ストックオプションでは「新株予約権を譲渡してはならないとされていること(譲渡禁止)」という要件を満たす必要があります。こちらは新株予約権の内容ではなく、割当契約で定める事項となろうかと思います。
結び
今回は新株予約権の内容のうち、「新株予約権を行使することができる期間」「増加する資本金及び資本準備金」「譲渡制限」に関してみてきました。
第4回に続きます。
会社登記/企業法務
東京都港区の司法書士
長克成