新株予約権の解説:第4回「新株予約権の内容3:取得条項」
- 第1回はこちら→新株予約権(1)-発行手続
- 第2回はこちら→新株予約権(2)-内容1:目的である株式の種類及び数/出資財産
- 第3回はこちら→新株予約権(3)-内容2:行使期間等
会社法第236条で規定されている「新株予約権の内容」。
今回はそのうち「取得条項」ついて見ていきます。
新株予約権の内容
取得条項
取得条項付新株予約権とは、一定の事由が生じた日に、新株予約権を発行している株式会社がこれを取得する旨の定めのある新株予約権のことです。会社が強制取得できる新株予約権ですね。
どのような内容を定めるかというと以下のような内容です。
- 一定の事由が生じた日に当該株式会社がその新株予約権を取得する旨及びその事由
- 当該株式会社が別に定める日が到来することをもってイの事由とするときは、その旨
- 一定の事由が生じた日に新株予約権の一部を取得することとするときは、その旨及び取得する新株予約権の一部の決定の方法
- 取得の対価の内容(株式・社債・新株予約権・新株予約権付社債・金銭等)とその数・額又は算定方法
どんな時に、どの新株予約権を強制取得して、対価としてどんなものを交付するか(又は無償で取得するか)といったところです。
取得条項の具体的な記載例として以下のとおりです。
取得条項の記載例
- 当社は、当社が消滅会社となる合併契約書の承認議案が当社の株主総会で承認された場合、又は当社が完全子会社となる株式交換契約書若しくは株式移転計画書の承認議案が当社の株主総会で承認された場合には、新株予約権を無償で取得することができる。
- 当社は、新株予約権者が「新株予約権の行使の条件」により権利を行使する条件に該当しなくなった場合には、その新株予約権を取得することができる。
上記の記載例は『新株予約権ハンドブック 第4版』(松井信憲著 商事法務)に載っている例です。
1.は合併や株式交換等の承認が株主総会で承認されたら、全新株予約権を強制的に取得できる内容です。
2.「新株予約権の行使の条件」にリンクする形で、行使条件に該当しなくなった場合にその新株予約権者の新株予約権を取得できるとしています。新株予約権者ごとに判断が行われるため、「新株予約権の一部を取得することとするとき」に関する定めをおいているとも言えますね。
ストックオプションの場合は、行使の条件として従業員/取締役等であることが定められることが多いですので、「ストックオプションを付与された人が会社を辞めた場合には無償で強制的に取得しますよ」といった意味になりますね。
司法書士としての観点としては、通常は行使の条件に該当しなくなった(行使不能)場合には新株予約権は消滅して、消滅の登記を申請しなければならないところ、取得条項によって自己新株予約権にしておけば溜まったタイミングで償却できる、とかでしょうか。
結び
今回は新株予約権の内容のうち、「取得条項」に関してみてきました。
取得条項についての定めは、後日触れる予定の「行使条件」と合わせて、設計者の個性・力量が出るところかと思います。
第5回に続きます。
司法書士 長克成(港区・青山一丁目)