新株予約権の解説:第5回「新株予約権の内容4:行使条件」

これまでは、会社法第236条で規定されている「新株予約権の内容」についてみてきました。

会社法第236条には規定されていない事項ですが、新株予約権の行使条件も新株予約権の内容とすることができると整理されています。

今回は、新株予約権の内容として明文化されていませんが、実務上はとても重要な「行使条件」について見ていきます。

新株予約権の内容

行使条件

「行使条件」とは文字通り、「どういった場合に新株予約権を行使できるか、又は行使できないか」という内容です。

例えば、ストックオプションとして発行される新株予約権につき、会社の利益や株価が一定以上となる場合にのみ行使可能とするもの、付与対象者が取締役・従業員等の地位を喪失した場合には行使を不可とするもの、などがあります。

新株予約権の行使の条件に関する記載の一例は以下のような形です。

行使条件の記載例

新株予約権の行使の条件

  1. 新株予約権者は、その権利行使時においても、当社又は当社の子会社の取締役、監査役又は社員の地位にあることを要するものとする。ただし、新株予約権者が、定年により退職し、任期満了により退任し、又は会社の都合によりこれらの地位を失った場合は、この限りでない。
  2. 新株予約権者が死亡した場合には、相続人は、相続発生日から6か月以内に会社が定めた手続を完了した場合に限り、その権利を行使することができる
  3. 新株予約権の譲渡、質入れその他の一切の処分は、認めないものとする。

上記の記載例も『新株予約権ハンドブック』に載っている例です。

1.はストックオプションでよく見られる条件で、会社を(自己都合で)辞めちゃった場合は行使できませんよ、という内容ですね。

2.は新株予約権者の相続人が行使する場合の条件を課しています。

3.については「新株予約権を譲渡してはならないとされていること」という税制適格ストックオプションの要件の1つですが、これは付与契約で定めてもよいと思います。

特にスタートアップ/ベンチャー企業では、株式はもちろんですが、新株予約権についても会社の役員・従業員等の関係者(+社外協力者)以外に渡ってしまうと経営や上場準備で支障がでることがあります。

譲渡制限、取得条項、行使条件等をうまく使って、望まない新株予約権者が誕生してしまうことを防ぐ必要があります。

また、少し論点は異なりますが、一定の行使の条件(ハードル条項)を定めることで有償ストックオプションのオプション価値を下げる効果があるともされています。

この辺はやや専門的な話になりますので、割愛します。

結び

今回は新株予約権の「取得条項」に関してみてきました。

「行使条件」に関する定めは新株予約権の内容の1つの肝と思われますので、ぜひ詳しい司法書士等にご相談いただければと思います。。

第6回に続きます。

司法書士 長克成/港区・青山一丁目