種類株式の解説:第5回「取得条項」

種類株式の内容について解説・検討するシリーズの第5回です。

取得条項

取得条項が付された種類株式(取得条項付種類株式)とは、発行会社が一定の事由が生じたことを条件として当該種類株式を取得することができる内容の株式のことです。

第3回、第4回で解説した取得請求権付種類株式は、株主から会社に対して取得を請求できました。

取得条項はその逆です。一定の条件のもと、会社から株主へ株式の取得を請求(強制取得)できます。

取得条項付株式は、定款で以下のような定めをする必要があります。(会社法第107条2項3号・108条2項6号

  • 一定の事由が生じた日に当該会社がその株式を取得する旨及びその事由
  • 当該会社が別に定める日が到来することをもって一定の事由とするときはその旨
  • 一定の事由が生じた日に取得条項付株式の一部を取得することとするときは、その旨及び取得する株式の一部の決定の方法
  • 取得対価を交付するときはその種類・内容、数・額又は算定方法

やや難解に思えますが、「どういう条件・期限で取得されるか」「取得の対価」「一部のみ取得する場合はその決定方法」といった感じですね。

取得に関する一定の事由

取得条項付株式を取得する「一定の事由」に関しては以下のような定め方があります。

  • 停止条件型 例:株式の上場決定を条件とする
  • 期限型 例:一定の年月日を定める
  • 会社決定型 例:取締役会決議で決定による(会社の決定に条件等を付すことも可)

取得の対価

取得の対価は「他の種類の株式」「新株予約権」「社債」「新株予約権付社債」「金銭等その他の財産」など自由に定められます。

なお、株式以外の財産を対価とする場合は、取得請求権と同様、分配可能額の範囲内でしか行うことができません。

分配可能額についてはこちらをご参照ください。(当サイト内リンク)

ベンチャー/スタートアップ企業では、「一定の事由・取得の対価」の組み合わせとして、「株式上場を決定し主幹事証券から要請を受けた場合に取得→普通株式を交付する」という内容が設定されることが多いと思われます。

取得条項付種類株式の定款記載例(上場時に取得)

当会社は、A種優先株式の発行以降、当会社が株式上場の申請を行うことが取締役会で決議され、かつ株式上場に関する主幹事の金融商品取引業者から要請を受けた場合には、取締役会の定める日をもって、発行済のA種優先株式の全部を取得し、引換えにA種優先株主に当会社の普通株式を交付することができる。交付すべき普通株式の内容、数その他条件については、「取得請求権(普通株式への転換請求権)」の定めを準用する。

結び

第5回は、種類株式の内容として「取得条項」について見てきました。

次回は「全部取得条項」について見ていこうと思います。

企業法務/商業・法人登記
港区の司法書士
長克成