種類株式の解説:第9回「議決権制限株式」
種類株式の内容について解説・検討するシリーズの第9回です。
- 第1回はこちら→種類株式(1)-剰余金の配当
- 第2回はこちら→種類株式(2)-残余財産の分配
- 第3回はこちら→種類株式(3)-取得請求権:金銭
- 第4回はこちら→種類株式(4)-取得請求権:株式
- 第5回はこちら→種類株式(5)-取得条項
- 第6回はこちら→種類株式(6)-全部取得条項
- 第7回はこちら→種類株式(7)-拒否権
- 第8回はこちら→種類株式(8)-役員選任権
議決権制限株式
株式会社は、株式の種類として、株主総会において議決権を行使することができる事項につき異なる定めをおくことができます。(会社法第108条1項3号)
この規定により、議決権を行使することができる事項を制限した株式が「議決権制限株式」であり、多くは株主総会において議決権を有しない「無議決権株式」として使用されているかと思います。
議決権制限株式を設ける場合は、種類株式の内容として、定款で次の事項を定める必要があります。
- 株主総会において議決権を行使することができる事項
- 当該種類の株式につき議決権の行使の条件を定めるときは、その条件
議決権制限株式(無議決権株式)の一般的な定款記載例
A種優先株主は、すべての事項につき株主総会において議決権を行使することができない。
司法書士的な観点から議決権制限株式の注意
議決権制限株式の中でもよく利用される「無議決権株式」ですが、その名前とはやや異なり、種類株主総会の決議は必要となる場合があります。
以下のような場合は、定款で種類株主総会決議を要しない旨を定めておかなければ、無議決権株式であってもその種類株主総会が必要となるので注意が必要です。
会社法第199条4項/238条4項に定める場合
↓(1)(2)の発行に関する募集事項を決定する場合
(1)譲渡制限株式の付された(無議決権の)種類株式
(2)譲渡制限株式の付された(無議決権の)種類株式を目的とする新株予約権
会社法第322条に定める場合
種類株式発行会社が会社法第322条1項1号~13号に掲げる行為をする場合において、ある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるとき。
※但し、322条1項1号に規定する定款の変更(単元株式数についてのものを除く。)を行う場合であって、種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、種類株主総会は排除できない=必須となる。
種類株主総会決議を要しない旨の定款の規定があるか否かで、当該事項の決議・実行の際に、無議決権株式であっても関与が必要となる場合がありますので、種類株式の内容設定の際にはよく検討しましょう。
結び
第9回は、種類株式の内容として「議決権制限株式」について見てきました。
次回でこのシリーズは最終回の予定です。
企業法務/商業・法人登記
港区の司法書士
長克成